NIHON UNIVERSITY SENIOR HIGH SCHOOL

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スーパーグローバル(SG)クラス

「文学を通して戦争を考える」~SG連続グローバルセミナー④~

11月11日(金),高校2年生のSGクラスを対象に,第4回のセミナーを開催しました。今回は小川公代先生(上智大学外国語学部教授)をお招きして実施しました。

今回の演題は「文学を通して戦争を考える」でした。夏休み明けから,事前学習として,カズオイシグロの長編小説『忘れられた巨人』を読み,それとアニメ『進撃の巨人』とを比較するなど,事前研究は小説さながら長い旅のようでした。学級担任である私が指導することもあれば,生徒が研究した内容を教室で共有してくれることもあり,大学におけるゼミのような学習を展開することができました。

以下はすべてクラスの生徒(高校2年生)による執筆です。

※内容にかかわる責は,学級担任にあります。

【セミナーの内容】

小川先生には「ケアの倫理」について教えていただきました。私たちはケアと聞くと,育児や介護など,誰かのお世話を思い描くと思います。しかし,実は「ケア」とは,「屹立した自己」を貫く(自分の信念を曲げない)のではなく,相手の立場に立って耳を傾け,相手の声に寄り添って行動を起こすことから生まれるものです。そうすることではじめて,本当の意味での「ケア」が成立します。

セミナーの前には,『忘れられた巨人』と『進撃の巨人』について研究しました。それを踏まえて,セミナーでは,それら二つの作品から「正義の倫理」(公平性や権利)と「ケアの倫理」(関係性や他者へのケア)について学びました。

『忘れられた巨人』では,主人公の老夫婦(アクセルとベアトリス)に着目しました。作中でアクセルがベアトリスを罰していた事実が発覚します。そこには,ベアトリスの行った不実に対してアクセルには罰を与える権利があるという「正義の倫理」がはたらいています。また同時にその場面では,怒りが鎮静化され,互いに許し合い,他者を信頼しようとするアクセルの態度も読み取れます。それが「ケアの倫理」であると言えます。

『進撃の巨人』では,主人公のエレン,その友人のジャン,そしてエレンの幼馴染である優しい青年アルミンに着目して考えました。エレンとジャンは「正義の倫理」の側の人物です。彼らは,過去に被った不平等や悲しい過去に対する報復として敵と戦います。つまり,反撃する権利があると考えています。これは「正義の倫理」です。一方で,アルミンこそが「ケアの倫理」の実践者です。アルミンは,敵が攻めてきて戦う以外の選択肢がないと思われる状況であるにもかかわらず,戦うこと以外の別の方法があるかもしれないと話し合いをすることを望みます。ここにこそ,たとえ敵であっても傷つけてはいけない,相手の気持ちに寄り添って考えなければいけないという「ケアの倫理」がはたらいていると言えます。

セミナー後半では,これからの未来を生きる私たちに向けて,先生は人生観についてもお話してくださいました。人間を「タクシー」に例えた「脳内のジェンダー割合」で,そのタクシーの中の乗客は,男性だけでも女性だけでもなく,両者が混在していることが大切と改めて認識しました。つまり,一人の人間には,「男性らしさも女性らしさも必要不可欠」であるということです。そしてその「人間」とは,「望んでいないのに何か,何者かになるもの」であり,それを理解してあげることが大切だということも教えていただきました。

【感想】

◆今日のセミナーもとても楽しかったです。小川先生のお話は心に残る言葉が多すぎて,感想をまとめるのが難しかったです。笑

私には特に,「人間はブラックボックスで中身は見えない。他人のことは簡単にはわからないし,自分のことも簡単にはわかってもらえない。」という言葉がとても心に残りました。また「寄り添うということは相手を想像すること」という言葉を聞いて,これからの人生ではこの言葉を大切にしようと思いました。

今回のセミナーは,戦争やジェンダーなど様々なジャンルのお話を聞くことができて,とても楽しかったです。今日は自分の考え方や価値観のようなものにとても良い影響を受けられたと思います。ぜひまた小川先生のお話を聞きたいです。

◆今回のセミナーを通して,私はもっと誰かに対して「ケア」できるようになれば良いなと思いました。

このケアというのはただ誰かのお世話をするのではなく,誰かの声に耳を傾けてその声に合わせて行動することです。つまりその人の心に寄り添うことではじめてケアが成立します。このケアの倫理を高校生である今知ったことは,私の人生観を変え,同時にもっと誰かの声に耳を傾け寄り添える人間でありたいなと思える大変貴重な経験でした。

◆有名なアニメとケアの倫理が結びついたことが意外でした。身近なアニメでも,見方を変えることでキャラクターがより鮮明に見えてきてとても興味深かったです。

人の全てを理解すること,自分の全てを伝えることはできませんが,文学を通してさまざまな立場に立って物事を考えることができます。新しい価値観や自分の知らない価値観に触れること,知ろうとすることを大切にしたいと思いました。

(松崎)

 

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